遺留分侵害額請求
1 遺留分に関してお困りの方へ
法定相続人には「遺留分」という最低限の相続取り分があります。ただ、実際に遺留分を取得するためには、相続から1年以内に他の相続人に対して請求する必要があります。遺留分に関しては、計算方法や手続き等複雑な場合がありますので注意が必要です。
以下のような場合には、是非一度当事務所へご相談ください。
- 親の遺言が長男(長女)だけに全部相続させる内容だった。
- 疎遠な親族が遺言を残していたが、相続人である自分に取り分があるのかわからない
- 兄弟が遺言を開示してくれないため困っている
- 以前は相続しなくてもよいと思っていたが、やはり最低限の取り分は相続したい。
- 遺言内容が不平等であり納得できない
- 遺留分額を具体的に計算したい
- 数年前に親族が亡くなったことを最近になって知った
- ほかの相続人から遺留分侵害額請求を受けている
- 遺言無効を主張したい。仮に有効でも遺留分は取得したい。
※以下では、令和元年7月1日以降に相続が生じた場合について説明をしております(新民法による遺留分侵害額請求制度)。
令和元年6月30日までに発生した相続については、旧民法による遺留分減殺請求制度が適用されますが、当事務所ではいずれも対応可能ですので安心してご相談ください。
2 遺留分とは
(1) 遺留分制度の概要
遺留分とは、亡くなられた方(被相続人)の遺産について、法定相続分とは違う遺言があった場合でも、法定相続人に最低限の取り分を認めた法律上の制度です(民法1042条以下)。
法定相続人が何人いても、誰か1人に全財産を相続させることも、相続人でない者に財産を贈与する(「遺贈」といいます)こともいずれも可能です。また、生前に自分の財産を誰かに贈与することも自由です。
ただ、遺贈や生前贈与がなければ遺族が相続できたはずの遺産であるにも関わらず、遺族が全く相続できないとすると、遺族の生活が危ぶまれます。遺族の最低限の生活保障も考える必要がありますし、遺族が財産形成に貢献した場合はそれも考慮するのが公平です。
このような観点から、法律は遺留分制度を設けて、法定相続人に最低限の取り分を認めたのです。
(2)遺留分を主張できる方(遺留分権利者)
遺留分を主張できる方は、法定相続人のうち、以下の方です。
- 故人の配偶者
- 故人の子(子が亡くなっている場合はその子=孫)
- 故人の直系尊属
- 故人の兄弟姉妹には遺留分はありません
また、相続の欠格・排除・放棄により相続権を失った方には遺留分がありません(放棄の場合は、代襲相続人も遺留分はありません(民法1042条、887条2項・3項)。
(3)遺留分の割合
遺留分の割合は、
- 直系尊属のみが相続人の場合、財産の3分の1(民法1042条1項)
- 上記以外の場合は、財産の2分の1(民法1042条1項2号)
- なお、遺留分権利者が複数人いる場合は、当該総遺留分を法定相続分で分ける
となります(民法900条、901条、1042条2項)。
例えば、Aさんが亡くなり、Aさんの法定相続人が父と母のみだった場合、父と母合わせて財産の3分の1が全体の遺留分となります。したがって、
- 父=全体の遺留分率3分の1×法定相続分2分の1=個別遺留分6分の1
- 母=父同様に個別遺留分6分の1
となります。
また、Aさんの法定相続人が、妻と子2名(長男・長女)であった場合、
- 妻=全体の遺留分率2分の1×法定相続分2分の1=個別遺留分4分の1
- 長男=全体の遺留分×2分の1×法定相続分4分の1=個別遺留分8分の1
- 長女=長男同様に個別遺留分8分の1
となります。
3 遺留分侵害額請求権
(1) 遺留分侵害額請求権の概要
自身が取得しうる遺留分について、これに反する遺言があった場合や、相続前に行った贈与によって、遺留分を侵害されている場合、侵害している相手(遺産や生前贈与を取得した者)に対し、遺留分侵害額請求をすることができます。
(旧民法下では、遺留分に関する請求は、相続の効力をなくして取り戻す効力(遺留分減殺請求の物権的効力)とされていましたが、現在の民法では、遺留分を侵害する分について金銭で精算する金銭請求のみとなりました。民法1046条1項、1048条)。
(2) 請求期限
遺留分侵害額の請求期限は、相続の開始又は遺留分侵害があったこと(遺留分を侵害する贈与や遺贈の事実)を知ってから1年間です(消滅時効、1048条前段)。
また、相続開始から10年を経過した場合には、相続や遺留分侵害事実を知らなくても請求権は消滅します(除斥期間、1048条後段)。
上記遺留分侵害額の請求の意思表示を行うことにより、遺留分侵害額相当の金銭請求権が発生していることになりますので、もし遺留分侵害者が支払ってくれない場合は、さらに5年以内に訴訟等を行う必要があります(民法166条1項1号)。
(3) 請求方法
遺留分侵害額請求を行うためには、請求期限内に権利行使をする必要があります。
具体的な金額までを示す必要はありませんが、期限内に意思表示(通常は書面によります。後々の証拠にするため、内容証明郵便による方法が望ましいでしょう)の方法により行使します。必ずしも訴えによる必要はありませんが、相手方が任意に支払ってくれない場合は、最終的には訴訟(裁判)によることになります。
なお、遺産分割協議の申し入れをしただけでは、当然には遺留分侵害額請求権の意思表示が含まれていると解することはできません。したがって、遺言がある場合に、当該遺言が無効であると考えて、遺産分割協議が必要であると判断した場合でも、遺言が有効であると判断される場合に備えて、別途、必ず遺留分侵害額請求をしておくべきでしょう。
(4) 遺留分の基礎となる財産
遺留分を計算する際の基礎となる財産の範囲は、以下の通りです(民法1043条から1045条参照)。
相続開始時に存在する遺産(遺贈財産も含む)
+法定相続人に対する生前贈与額(原則10年以内)
+第三者に対する生前贈与額(原則1年以内)
-被相続人の債務額
※基礎財産の評価基準時は相続開始時です。
(5) 遺留分侵害額の計算方法
基礎財産から遺留分額を計算した後は、実際に遺留分を侵害された額(受け取ることができていない不足分額)を計算します(民法1046条2項)。
遺留分侵害額=遺留分額-遺留分権利者が受けた贈与・遺贈・特別受益の額
-遺産分割対象財産がある場合は、遺留分権利者の具体的相続分に相当する額
+遺留分権利者が負担する債務
※寄与分の有無は影響しません。
(6) 裁判所による期限の許与
遺留分侵害額請求を受けた者がすぐに金銭を支払うことができればよいのですが、相続した財産が不動産や株式など、金銭でない場合や、金銭にすることが難しい財産の場合は、金銭を支払うことが困難な場合があります。
そのため、遺留分侵害額請求を受けた者は、裁判所に対し、金銭の全部又は一部の支払いについて相当の期限の許与を請求することができます(民法1047条5項)。
(7) 裁判所での手続き
遺留分侵害額を請求しても相手方が任意に支払ってくれない場合は、裁判所での手続きを行うことになります。
手続きとしては、
① 家庭裁判所に遺留分侵害額請求調停の申立て(調停前置)
② 調停での話し合いが成立しない場合は、地方裁判所(訴額が140万円以下の場合は簡易裁判所)に申立て
となります。
① 遺留分侵害額請求調停について
相手方の住所地を管轄する家庭裁判所か、当事者が合意する家庭裁判所に申し立てます(被相続人の住所や義務履行地などには管轄はありませんので注意してください)。
実費として、1200円の印紙と、所定の郵便切手が必要です。調停による話し合いで遺留分額の合意ができれば、家庭裁判所で調停調書を作成します(調停調書に記載された金銭支払い義務を守らない場合は、強制執行ができます(「債務名義」といいます)が、記載方法によっては強制執行の対象外となる場合があります。したがって、調停調書に記載する具体的な文言は慎重に検討する必要があります。
② 遺留分侵害額請求訴訟について
調停が成立しない場合は、地方裁判所に訴訟申立を行います。金銭請求訴訟として行いますが、訴訟の段階では少なくとも弁護士に依頼して対応する必要があります(但し、相続開始時から1年以内に遺留分侵害額請求の意思表示を行っている必要がありますので、実際には交渉段階から弁護士に依頼されることを強くお勧めします)。
4 当事務所にご依頼されるメリット
(1)お客様に最適な法律の専門的サポートを受けることができます
弁護士は法律の専門家として、お客様の法的な問題に対し、最善の解決方法をご提案します。お客様のお悩みは、まさに千差万別です。特に相続・遺留分の問題に関しては、ご親族間の人間関係が大きく関わるため、一つとして同じ事案はありません。当事務所では、お客様一人ひとりに最適な解決方法や道筋をご提案します。時には、お客様が望む解決が法的見地から困難な場合もあり得ます。その場合には、事件の見通しやメリット・デメリットなどをわかりやすくお話します。
(2)円満な解決を図ることができます
相続・遺留分の問題の場合、ご親族間の問題であるため、今後の付き合い等を考えると、最初から鋭く対立して、いきなり裁判に持ち込むことは必ずしも得策とは言えません。
当事務所では、お客様のご心情に配慮し、交渉段階から代理人として活動し、可能な限り円満な解決を図ることが可能です。
お客様のご希望によっては、代理人としではなく、お客様ご自身で交渉を行うための支援業務(バックアップ)を行うことも可能です。
(3)お客様の代理人として交渉をお任せいただけます
遺留分侵害額請求をする際、ご本人様らが直接やり取りする必要がありますが、感情的対立が強いご親族間の場合、直接の話し合いができない場合も少なくありません。
当事務所では、ご依頼いただいたお客様の代理人として、全面的に交渉をお任せいただけます。法的手続のサポートはもちろん、交渉、合意書への調印、入金確認及びお客様へのご送金など、煩雑な手続や心理的負担感から解放されます。
(4)交渉のみならず、裁判所を利用した手続を行います
すべての案件が話し合いによる解決がされるわけではありません。場合によっては、早期に交渉に見切りをつけ、裁判所を利用した手続に移ることが有効な場合もあります。
遺留分侵害額請求の場合、調停または訴訟による手続きが必要です。また、遺留分侵害額請求とともに争いになりやすい、遺言無効確認、合意による遺産分割、特別受益の問題、寄与分の問題など、相続に特有の問題がありますが、これらについてももちろんご依頼を承っております。
(5)ワンストップサービスを行っています
遺留分侵害額請求により金銭を取得した場合、税務申告を行う必要があります。当事務所では、経験豊富な複数人の税理士等と提携しておりますので、お客様にストレスなくワンストップでのご依頼いただくことが可能です(※専門家等のご紹介の際、紹介料等は一切いただいておりません。当事務所でご紹介できる士業としては、税理士、公認会計士、司法書士、社会福祉士、社会保険労務士、不動産鑑定士、弁理士等です。また、士業以外では、不動産会社、探偵事務所等がございます)。
5 「とりあえず」のご相談をお勧めします
このHPをご覧になっている方は、インターネットで「遺留分」などのワードを検索していただいたかもしれません。今はネットに様々な情報が書いてありますので、一通りの知識を得ることができると思います。ただ、ネットの情報は一般的な知識のみが記載されており、「お客様自身の事案」に対する「具体的な解決方法」は記載されていません。また、実際にお客様の代わりに動いてくれるわけでもありません。
当事務所では、お客様の固有の事案一つ一つに対し、最適な方法をご提案します。なるべく早くご相談いただければ、可能な手段も多くなります。少しでもご不安がある方は、とりあえず、のお気持ちでご相談ください。
6 弁護士費用のめやす
当事務所では、弁護士費用の明確化のため、弁護士費用のめやすをあらかじめ公表しております。
遺留分侵害額請求に関する弁護士費用はこちらをご参照ください
また、当事務所では、ご依頼いただく際、事前に弁護士費用の見積もりをご提示しますのでご安心ください。お客様のご負担にならないよう、分割払い等のご要望にも柔軟に応じておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
※遺留分侵害額請求の他に、「遺言書保管サービス」、「任意後見契約」、「財産管理契約」、「個人顧問契約」などもあります。お気軽にご相談ください。